H7 芦ノ湖(あしのこ)
~神山の山体崩壊により形成されたせき止め湖~
Lake Ashinoko
ジオサイト解説
約3000年前、後期中央火口丘(※1)の一つである神山が噴火した時に山体崩壊(※2)をおこし、カルデラ(※3)内にあった大きな湖に流れ込むと同時に、早川をせき止めた結果できた湖です。湖水面の標高は約720mです。湖の西側は外輪山の内側のカルデラをつくる急峻な地形が、東側には後期中央火口丘から流れ出た溶岩(※4)類を見ることができます。
コイ科の魚であるウグイにはトリボロドン・ハコネンシスという学名がついていますが、hakoneが学名に含まれているのは芦ノ湖産の標本に基づいて名づけられたためです。
芦ノ湖には九頭竜が棲むと伝えられ、箱根権現を開いた 萬巻 上人によって鎮められたといわれています。それ以後、芦ノ湖は箱根神社の御手洗池として利用され、毎年開かれる湖水祭には三斗三升三合の赤飯が、箱根神社の宮司の手によって捧げられています。
芦ノ湖の水は、もともとは早川の水源となっていましたが、現在は、江戸時代に完成した箱根用水(深良用水)を経由して静岡県側に流出しています。早川への流出は芦ノ湖の最下流部(早川の最上流部)にあたる逆川口に造られた湖尻水門により制御されており、大雨時などを除くと、 芦ノ湖の水が早川に流出することはありません。
※1 後期中央火口丘:カルデラの中にできた比較的小さな火山体を中央火口丘という。箱根火山では前期、後期2つの活動期がある。
※2 山体崩壊:山の形が変わるような大きな崩壊現象のこと。成層火山で生じることが多い。
※3 カルデラ:火山にある火口(直径数十~数百m)より大きな凹地形の総称である。成因とは無関係で、火山活動以外で形成されたものもある。通常閉じた円形であるが、一方向に開いた馬蹄形のものもある。
※4 溶岩:マグマがバラバラに飛び散らずに地表に流れ出たもの。高温で液体のものと、冷え固まって固体のもの、両方に使う。
It is thought that the present shape of Lake Ashinoko developed around 3000 years ago. Its west side is defined by the steep slope of the caldera(※3) wall, and its east side by lava(※4)flows of younger mountains such as Mt. Kamiyama and Mt. Komagatake.
A legend says that a high priest named "Mann-gan Shonin" ("mann-gan" means “many books”) called on the god Hakone Gon-gen to appease the 9-headed dragon living in the lake. Since then, Lake Ashinoko has been a sacred lake of Hakone-jinja Shrine.
※3 caldera:General term of negative landform which is bigger than volcanic crator which diameter is within hundreds of meters.This landform is made from any causes including volcanic movement. Its shape is normally closed circle but sometimes open horseshoe shape.
※4 lava:We call Lava when magma reaches the surface and flows without being scattered in pieces. Both hot liquid form and solid form after cool down are called lava.
キッズジオパーク
芦ノ湖(あしのこ)
箱根の山の頂上にある、湖の美しい景色は、古くからたくさんの歌や紀行文(昔の旅行記)に紹介されている名所です。この湖が「芦ノ湖」と呼ばれるようになったのは、水辺に芦がたくさん生えていたからといわれています。
鎌倉時代のはじめに書かれた本には、すでに「芦ノ湖」の名前がのっています。明治時代より前には、「湖」という漢字は「うみ」と読み、「海」と同じように、「水がたくさんあるところ」という意味を持っていました。
季節にあわせて美しい自然の風景を映す芦ノ湖は、今も昔も、箱根を代表する景色といえるでしょう。
芦ノ湖は箱根火山の中にあるカルデラ湖(注1)で、標高724mに位置し、周囲19km、面積6.9k㎡、最深部は43.5mもあります。
芦ノ湖が誕生したのは、今から約3,000年前に起きた神山の水蒸気爆発による土石流(注2)が、当時、仙石原に流れていた川をせきとめて、その上流に水がたまり、湖になりました。
芦ノ湖の豊かな水は、江戸時代に作られた深良水門から取水され、ずい道内を通って、静岡県側へ1日15万トンも流れ出ています。この豊かな水は、周囲の山々に降った雨が浸透して地下水となり、芦ノ湖底から多量の地下水として湧き出しているものと考えられます。 また、芦ノ湖には、その昔には湖面上に立ち枯れの大杉などが立っていました。この杉が湖面に映る姿がちょうど逆さに見えることから「逆さ杉」と言われています。今では湖面上に杉は見られませんが、湖底にはたくさんの大木や立ちあがった幹が確認されています。
(注1)カルデラ湖
カルデラとは、火山の活動によってできた大きな凹地のこと。カルデラ湖とは、カルデラ全体または一部に雨水が貯まり湖になったもの。
(注2)土石流
土砂が雨水や地下水と混ざり、河川・渓流などを流れくだること。
(提供:箱根町)